不世出のバリトン歌手フィシャーディースカウは、20年近く前に舞台から退いたのちも、後進の指導や研究など活発な活動を繰り広げています。宗教音楽やドイツリートそしてモーツァルト・ワーグナーをはじめとする幅広いオペラに多大な足跡を残ししています。
本書では親子程の年の離れた二人が出会い。作曲まで手掛けていた若きニーチェはワーグナーの音楽に対しての感激、接近、協力、そして疑惑、離反の歴史を辿り、克明に調べた上で美しく書かれた名著です。
ワーグナーはニーチェを自分の音楽の良き理解者とし歓迎し、いやそればかりではなく自分とコジマの結婚立会人に選び、また息子ジークフリートの後見人にしょうともしました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、ワーグナーの楽劇は音楽のジャンルを超えて、古代ギリシャの原点に還り、さまざまな知的、感性的アプローチを融合するものであり、やがてニーチェは、音楽的霊感の魅力に圧倒されたと思うと、今度は、情念と絶え間なく続くむなしいどよめきに反抗し、ワーグナーの音楽のあるべき帰結を予見し、他の人が気づかずにいた危険を知って戦います。
実に壮絶な葛藤がニーチェの中で湧き上がってきます。勝手ですが、後は本を読んでの楽しみとして下さい。