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”まちに出た、建築家たち。”ーNPO法人家づくりの会

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森の貯金箱事業

家づくりニュースの表紙でも紹介した話ですが改めて詳しく紹介します。
今、釜石森林組合と岩手県森林組合連合会及び、遠野市のリンデンバウムという工事屋さんと、森の貯金箱事業を展開しています。
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そのいきさつは、昨年の東北大震災の被災者用応急仮設住宅(上記写真)の建設以降、そこで提案した工法(その後FSB工法と命名)が、岩手県森林組合連合会の方の目に留まり、盛岡市が寄贈する被災地の仮設団地の小さな集会所の建設工法として推薦され、山田町、大槌町、陸前高田市の集会所の建設に、設計者として協力したことから始まりました。


最初の仮設住宅の内部写真と下の内部写真を比較していただくと分かるように、同じ杉角材の内部表しの表情も、この集会場のように、必要なら節の少ない材を集めた仕上げにすることもできます。一軒の住宅のうちで、節があってもいい部屋と、きれいな表情にしたい部屋とを、上手に使い分けると、全体的にあまり価格アップにしないで、満足のいく仕上がりの家にすることも可能です。
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このような集会場を作っているときに、釜石地方森林組合の方にも、この工法が森林整備を促す可能性があるということで目にとめていただきました。組合の事務所の建設に際しても、この工法が推薦され、設計者として協力することになりました。
というのは、釜石の森林組合の4割の組合員の方が被災され、その再建住宅をこの工法で格安に作ってあげられないかとのことでした。その試験的意味もあって、まず組合の事務所を一階に、モデル住宅を二階に作りました。
それにはわけがあって、今、岩手県の森林整備を行おうとすると、丸太の1.5割がA材(建築用材)、7割がB材(合板用材)、1.5割がチップ材として産出されます。それが、今回の震災で岩手県にあった二つしかない合板工場が被災し、一社の合板工場は廃業し、宮古の工場は3割操業に追いやられてしまいました。それで今、B材の行き場がなく森林整備が滞っています。そのために釜石の森林組合はそのB材を、石川県や静岡県の合板工場まで運んでいる状況です。
それで、通常の木造より3から4倍の木材を使用するこの工法で、格安に住宅ができれば、今後必要とされる再建住宅に採用され、行き場のなくなったB材の活用の道を開くことになります。それで森林組合の事務所の二階を展示場にして仮設住宅で暮らしている皆に、見ていただこうと言うことです。


この工法での住宅の建築は、通常の在来工法で木材を約13立米使用する所を、約45立米使用することになり、それは1ヘクタールの森林整備をすると、産出する木材製品の全てに相当する量とのことです。森林整備をしない森と、した森とでは、その後約十倍の二酸化炭素の吸収固定量が違ってくるそうです。さらにその使用した木材を建築部材として、二度三度と使っていける工法にすることで、木材の生長期間以上に、二酸化炭素を固定し続けることになります。それによって始めて、木造での建築行為が環境の負荷削減に貢献できることになります。

この工法をFSB(forest stock in building)工法と名付け、この工法を活用する活動を、森の貯金箱事業として岩手県の森林組合連合会を中心に、釜石地方森林組合、工事施工を遠野のリンデンバウム、設計を結設計で、進めていこうとなりました。その延長でFSB工法の規格型住宅をいくつか考え、価格を決め、パンフレットも用意しました。それで、月一程度、釜石に定期的に通い、仮設住宅から見にこられた方々に説明をしてきました。昨年の11月頃、殆どの方に説明が終わり、一段落しました。今後、私は必要な時のみ行くことになります。これまで3棟程注文があり、春から工事が始まります。


森林組合の事務所の建設途中、この工法の壁パネルを活用して、遠野市や盛岡市のイベントで使用する子供用の滑り台を製作することになり、それもFSB工法で設計しました。イベントはさほど盛り上がらなかったのですが、滑り台の方は子供たちに大人気でした。この滑り台は、その様子を見ていたイベント関連の方から、新たな注文を年内だけで、二台も頂いたそうです。


暮れには、KDDIの社会還元事業で、釜石のバス停留所の屋根つきベンチを数
箇所寄贈するもので、FSB工法のパネルでつくりました。AU携帯電話器のマニュアル本を回収し、それを再生紙にすることで得られた利益を社会還元する事業ということで、KDDIの広報誌に小さくその写真が載っていました。


釜石に通い、仮設住宅に入られている方と色々話をさせていただきました。殆どの方は、自分の持っている土地は流された場所で、建築出来ない土地になっています。そのため自治体が交換地として供給する、山を切り崩した、高台造成地が出来るまで建てられないでいます。その造成計画も中央官庁が中央のコンサルと進めている状態とかで、遅れていて、「早く出たい!」という仮設住宅の住人の切実な声には、身につまされます。しかも、今、被災地では建設費はどんどん上昇していて、バブルの様子を呈しています。いざ建てられるときには、現在の何割増しになっているか計り知れません。理不尽の極みです。だからといって嘆いていてもしょうがないので、被災地だけでなく、関東いや全国どこでも、一般の建て主さんはもちろん、建築やさんにも、FSB工法で建てたいという方がいたら協力して、下のキャッチフレーズの元、広めていきたいと思っています。
「貴方が作る一軒の住宅が、1haの森林整備を促し、CO2による環境負荷を削減します。」

 参考までに、35坪程の住宅一軒を、FSB工法で建てていただけると、約45?の木材製品を使用することになり、1ヘクタールの森林整備を促し、40年で約30から40トンのCO2の吸収固定を増進させることになります。それで建築だけでなく、様々なものにも提案し、実践していく、「森の貯金箱事業」を森林組合の方々と一緒にやっています。その一環で、このFSB工法で、構造耐力や防火構造の研究開発に、国交省の先導技術開発助成事業に採択され、研究開発を進めています。次回はそのことを話します。藤原昭夫/結設計
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by npo-iezukurinokai | 2013-03-04 20:29 | 結(ゆい)設計 | Comments(0)
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