正方形の平面形の部屋にどんな屋根を掛けようか、と考えたとき、いろいろな形の屋根が考えられます。
この模型写真では二方向の片流れ屋根がかかっているのがお分かりでしょうか。この場合、対角線上に折れ線ができて、斜めにのぼっていく感じになり、その下の空間は強い方向性を持ちます。
この家は二つの正方形の平面形をもつ建物が寄り添いあっています。しかも少しずれながら並んでいます。
これは傘亭、時雨亭というふたつのお茶室です。京都の高台寺にあります。この二つのお茶室は渡り廊下でつながっていて、それぞれが非常に個性的な空間をもっています。手前の時雨亭は、跳ね上げ式の建具で開放的な空間で、外へ外へと意識が広がっていくようです。一方の時雨亭は唐傘をパッと広げたような構造をしていて求心的な、内面へ意識が向かうような空間になっています。
この家の設計途中に、せっかく二つの建物が寄り添いあっているような建物なのだから、まったく性格の違う対照的な空間にしたほうが楽しいのではないか、と思うようになり二階建てのほうの屋根を傘亭のような放射状に垂木が広がっているような、構造にすることに変更しました。
施工は大変です。一本一本角度が違ってきますから、現場に材料を持ち込む前に、工場で仮組みをしながら接合部の加工を進めました。岐阜県中津川市加子母の中島工務店のプレカット工場の一画をつかって手刻みと仮組みを行っていただきました。こういう難しい仕事にも、一生懸命付き合ってくださる工務店はありがたいものです。
出来上がった空間はとても力強く、二階に登る前からちらりと見える骨組みが期待感を高めてくれると思いませんか?
日本の丸太を削った梁がのうえに一本の束が立ち、屋根の中央を支えています。
ここは子供部屋、この屋根を支える木々のようにのびのびと育っていってほしいと願うような気持ちです。
安井正/craftscience(
NPO法人家づくりの会所属)