横浜市のマンションが傾いたという、杭工事の手抜き(データ改ざん)問題が話題の渦中ですが、たまたま当事務所でも現在杭工事の真っ最中の現場が進行中ですのでその話をしたいと思います。
このような建物密集地に計画した住まいであるため鋼管杭を用いましたが、今回事件となっている大規模マンションは、当方がゼネコン時代に良く関わったアースドリル工法だと思われます。
しかし、実際に掘り進めた地中深度内の地盤の状況を確認することは、どのような工法を用いても同じです。
こちらが鋼管杭。今回は約18mの長さを9本打ち込みます。
しかし18mもの長さのものを持ち込んだり、この長さを扱える大きな重機を入れることは、限られた敷地の大きさではできません。
そのため、約6mの長さの鋼管を3本用いて1本の杭にする方法をとりました。
実際には、1本目を埋め込んでは2本目の鋼管を重ね継いで現場全周溶接を行い、引きつづき埋め込むという作業を繰り返します。
土木的な作業に思われがちですがいがいと繊細な技術が要求されるのです。
こちらは溶接前に、重ね継ぎのズレをゲージにてチェックしているところです。
上部のステンレスのバンドのようなものは、全周溶接を可能とする溶接機のレールのようなものです。
風が強いと溶接に悪影響を及ぼすため現場の風の強さをチェックします。
溶接中。
溶接後にはとけ込んだ部分が盛り上がります。(予盛りと言います)これが空隙なく、予盛りが高すぎないかを現場監督や構造事務所と共に確認しています。
引きつづき打ち込みへ。この工程をもう一度繰り返すことで1本の杭打ちが完了します。
そして、杭打ち機が実際に堀進めた設計地盤の掘削抵抗値と事前に行っていた地盤調査データーとを照らし合わせ、設計必要地耐力が見込めるかを必ず確認します。
今回用いました鋼管杭の先端ですが、このようにナナメの羽が2枚付いていて、杭を回転させることでビスのように地面にねじ込まれていきます。よって打撃による振動は全く起こりませんがその分時間や手間が掛かります。
今回は、9本の内の残りの1本が、2日間かけても10m以深にどうしても入らずに、杭の先端を新しく造って後日再度チャレンジすることになりましたが、現場監督とこれで良しとして終わらせることもできてしまうのかもと、ほんとに人だよねと話したのでした。
ちなみに騒音は95dB以下で重機のエンジン音によるものでしたので、住宅エリアにも優しい工法ではないでしょうか。
そして問題のマンションの工法の場合は、先ず、専用掘削重機で強固な地盤まで届く深い穴を掘り込みますが、この時点で上記と同じように、掘削抵抗値を必ず確認し、満たない場合は更に数値を満たす深さまで堀進めねばなりません。
その後に、鉄筋カゴと呼ばれる筒状に組んだ鉄筋を穴に差し込んで、コンクリートを流し込みますが、今回はそのコンクリート自体まで設計必要強度を満たしていないと思われる改ざんが為されたことが発覚したようです。
何れも大きな費用に影響する内容であり、データーをとるのを忘れてしまったとか、雨でインクが滲んでしまったとかいうような、子供じみた次元の話しでは無いと考えてしまいます。
《追記》
後ほどニュースで問題のマンションは鋼管杭であることが分かりました
(杉浦 充/充総合計画)
by npo-iezukurinokai
| 2015-10-19 12:05
| 杉浦 充
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