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”まちに出た、建築家たち。”ーNPO法人家づくりの会

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コミフロ講座⑥ 快適な広がり

建築家の独り言・・・って感じになっていますが・・・

⑥快適な広がり

構造と機能・性能
確かに大切なものですが、それだけでは良い家になりませんね。住宅展示場の家がどんなに素晴らしくても、自分で住む事を考えたら、満足のいく住まいにはならないでしょうね。
敷地環境条件・家族構成・家族の関係・予算などから始まり、過去から未来まで考えて家は創りますよね。その中に快適さや便利さだけではなく、好みや価値観も割り込んで来ます。

構造や機能・性能は必要ですが、これは付随するもので、本来は家の主役では有りません。建築家や施工者が取組む問題で、建て主は自分達家族の生活や、その家で如何に楽しく、快適に、安全に過すか?が大切なんです。最近の家づくりは情報が氾濫し、建て主までが数値に追われ、性能が良ければ「よい家」と考えてしまっているようです。家はそれだけじゃないし、それだけで快適になるとは限りません。

ここで言う「快適な広がり」とは、狭い敷地、少ない予算の制約の中での「快適さ」を求めた「広がり」も当然ありますが、その空間の広がりによって、家族のつながりや、建物の室内環境の良さをも追求しています。

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創り手側の問題?
技術的な問題として、広がりを持たせるためには「断熱」「構造」「冷暖房計画」等の裏付が必要になります。これは私達が考えて、提案する事です。

使い手側の問題?
細かな部屋ばかりでは窮屈で、使い勝手が悪く、あまりオープンにすると、片付かずに、落着かない・・・住む方によって様々です。
自分に合った広さ、つながりもあり、また数年後にはどうなるか?良く考えないと、家族構成が変わったり、加齢したり・・・いろいろ変化が訪れます。その中で様々な変化に対応出来る開放性と可変性が必要になります。間仕切りの建具で調整したり、家具を置いて区切ったり、簡単な間仕切りを造ったり、カーテンなどで区画する手もあります。住む場合、プライバシー重視で、全て個室では人間関係にとって良い事は有りませんが、あまりオープンではストレスが溜まります。その家族に丁度良い関係・開放性・プライバシーがあります。細部の調整は、全てを建築に求めるのではなく、住みながらの工夫で対処する必要があります。無理なく、住める間取りが良いですね。

生活の場としては、横のつながり・広がりが様々な可能性を持ちます。快適さなどは、上下のつながりも大切で、太陽光を採り入れたり、温熱環境を整える為にも重要です。個室と個室の関係、個室と居間等との関係、水廻りと個室、水廻りとパブリックスペース、水廻りと水廻り・・・いろいろなつながりがあります。繋げ方も様々で、楽しい工夫がいっぱい出来ます。「広がり」とひと言にいっても様々で、敷地や家族などの条件で答えは無数にありますね。

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⑨自然素材

何故?いまさら自然素材・・・
不思議ですね。昔はみんな自然素材で作られていました。と言うか自然素材しかありませんでした。家づくりにも時間と手間が掛かりました。昔・・・と言っても、それほど昔ではありません。ハウスメーカーが台頭して来た頃・・・30年くらい前ですかね?日本の住宅文化の歴史はその頃、塗り替えられました。高度成長の中で、「軽薄短小」ありましたよね。この頃住宅も変わったんです。私も実はよく知らない時代です。子供の頃をその中で育って来たのですが、建築設計に携わっていなかったので、それほど記憶にありません。
新建材・・・ありましたよね。ベニヤにビニールを貼ったみたいな合板。流行りました。きれいで、安くて、施工性が良い。本物の木が高く、印刷された木目のベニヤが広がりました。その後、ビニールクロス?漆喰は古くさく、施工に時間が掛かり、代わり映えしない。新建材のベニヤもイマイチ。簡単に貼れて、いろいろな柄が選べて、安い。施工性も抜群。
その頃、柱も集成材になり、天井もラミ天になり、床の間も化粧合板や集成の床柱で作られるようになりました。
そして、今は構造では梁も集成材になり、当然国産材ではなく外材です。外材が主流になったのも、木材の自由化という政治問題でした。ドアと枠はメーカーが作る木屑と接着剤とビニールの製品。狂わず、施工が楽で、安い。大工とペンキ屋と左官屋と・・・様々な職人を排除する事で、合理化を図って来ました。

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で、今自然素材が見直されたのは何故でしょう?
今までの良いものはすべて施工性、価格という作り手側の都合で出来たものばかりです。確かに安いのは消費者のニーズですが、犠牲にしたものが大き過ぎました。

高断熱・高気密住宅がもてはやされ、今や省エネ、環境のためには欠かせないものになりました。技術も進み、計画換気も必要とされるようになりました。その間にいろいろ問題もありましたが、この高気密により化学物質過敏症なるものが生まれました。シックハウス・・・よく聞くようになりました。ホルムアルデヒド、皆さんご存知ですよね。ベニヤなどの建材から出る有害物質の発散量を制限したり、換気を義務付けたりしましたが、こんな事で安全な室内環境は確保されません。今、規制されているのは極一部で、まだまだ有害な物質は増え続けます。
そのような中で、自然素材が見直されて来ました。自然素材がすべて安全という訳ではありませんが、長い間使われ続け、危ないものは排除されたり、改良されたり、使う場所が制限されたりして来ました。その中でも代表が木と漆喰なんです。細かな事を言うと、危ない木も、危ない漆喰も、危ない珪藻土もありますが・・・

化学物質
いろいろありますが、石油から出来たもの・揮発性のもの・ビニールのように腐らないが、燃やすと臭い・よく見えないところにいろいろ使われている糊やつなぎ・・・すべてが悪い訳ではありませんが、悪いかどうか?分からないものが多い。便利を得て、健康を害したり、命を失ったり。善玉悪玉の判断は難しい。

自然素材
自然に出来上がり、また自然に土や水や空気に。人間が造った以外のものですね。悪さはしません。ゆっくり、落ち着いて付き合えば非常に良いものです。

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住宅に求められる安全性と施工性・コストのバランス
住宅を造る時にコストが最優先とされています。でも、このコストの考え方が問題なんです。安物買いの銭失い・・・良く言いましたよね。でも、今は100円ショップなどで十分に良いものを買えたりします。物の価値が分からなくなっています。家は安いだけじゃ駄目です。それは安いに越したことはありません。でも、時間というものを考え、長持ちさせれば多少高くても、結果安い!健康や安全を犠牲にしての安さは、本当は安くない!環境への負荷が大きく、自然を破壊するものは、結果割高になる!手間と材料の価値が逆転した頃から、ものづくりは大きく変わってしまいました。消費は美徳じゃない・・・と言いながら、まだ続けています。使い捨ての時代は続いています。人が一人一人いろいろなバランスを考えた価値観を持たないといけない時代になっています。人より楽をして、人よりいい思いをするのが良いと思っている人ばかりでは、人間社会は壊れてしまいます。犠牲の上に幸せがある事を自覚しないと。
皆でリスクを共有し、幸せも共有しないと・・・
自然は一度壊すと元に戻すのは大変です。出来ないかも知れません。大切な自然素材を、あるうちに十分に使いましょう。そして、安全で快適な家で暮らし、自然も守りましょう。
by npo-iezukurinokai | 2007-06-15 10:13 | マツザワ設計 | Comments(0)
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