前回は地下の書斎の話でしたが、今回は、その手前の玄関についてご紹介します。
家に入る第一歩を踏む玄関は、文字通り「家の顔」になり、家全体の印象を左右します。
できれば「広くて堂々とした玄関」といきたいところですが、面積の規制が厳しい場合は、玄関ばかりに面積を割くわけにはいきません。バス通りの家の場合も、玄関の面積は必要最低限にならざるを得ませんでした。そのため、玄関を広く見せるよう、思案を巡らせることになりました。
まず、外部空間である玄関ポーチですが、ここは法的な面積には入らないので*1、広々とつくることができました。屋根付きで門扉と壁に囲い込まれたポーチは、内部のような感覚です。そのポーチと玄関内部とを透明ガラスで仕切り、壁・床が連続して見えるようにすることで、視覚的に内外を一体化し、玄関全体としてはゆったりとした空間にしています。壁に沿って取り付けたベンチも、実はガラスのところで二つに分かれていますが、内外の一体感を印象付けるのに一役かっています。また、玄関とポーチの部分は台形の平面をしており、奥へ行くほど幅が狭くなります。ポーチから奥を見ると、ベンチの背となるコンクリートの壁が斜めに視界に入り込んでくる関係です。この斜めの壁によってパースペクティブ効果が生まれ、実際以上の奥行を感じさせています。
それから、ベンチは出入りの際の荷物置場として、とくに買い物帰りには重宝しますし、そのほか、来客時の簡単な応対もこなせて、玄関先にゆとりをつくり出しています。
室内の面積としては決して広い玄関とは言えませんが、玄関ポーチを上手く使うことで、
広々とした玄関が実現しました。
(つづく)
(写真上) 玄関ポーチ
(写真下左)玄関扉を開けたところ。玄関の左手に地下へ下りる階段がある.
(写真下右) 玄関からポーチをみたところ.
*1玄関ポーチはつくり方によっては、床面積に入ることがあります.
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白崎泰弘/シーズ・アーキスタディオ (NPO法人家づくりの会所属)