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”まちに出た、建築家たち。”ーNPO法人家づくりの会

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カレ邸の見学

アルヴァ・アアルトの設計したカレ邸は、個人的にとても見たかった建築で、最近見学が可能になったという情報の元(現在、土曜日、日曜日のみ内見可)、予約をして行きました。

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アアルトは20世紀を代表するフィンランドの建築家で、カレ邸はフランスの画商のルイ・カレが、晩年に奥さんと一緒にゆっくり過ごすために建てたギャラリー兼住宅です。
そして、フランスで唯一現存するアアルト作品でもあります。

ちなみに、「アアルト」とはフィンランド語で「波」を意味するらしいです。この「波」をイメージさせる「曲線のデザイン」がフィンランドのデザインの特徴であり、そこからアルヴァ・アアルトのデザインを思い浮かべるとなんとも感慨深いものがあります。

カレ邸はパリの郊外にあり、車で1時間ほどののどかな田園地帯の中の小さな村(バゾッシュ・シュール・グイヨン村)にありました。交通手段は乏しく、一般的には電車とバス、タクシーを乗り継いで行かねばならず、気軽に行くのはとても難しいような場所にあります。

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内部見学の予約時間より1時間ほど早く到着したので、時間まで外部を見学していました。
外部は基本的に自由に見学できるので、じっくりと周辺から建物を写真に収めていました。

芝生の斜面とそれに調和するような低くのびやかな屋根が特徴です。
ランドスケープまで丁寧に計画され、周囲の林に溶け込むようなフォルムは美しいの一言でした。

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予定の時間になり、玄関前に行くとガイドさんがすでに待っていてくれました。

まずは、アアルトについての解説を聞きました。英語での話でしたので、聞き取れないことも多かったですが、丁寧に熱く語ってくれたのが印象的でした。

その後、靴に見学用のビニールを被せていよいよ見学開始です。

内部見学では、ガイドさんが付きっきりで各部屋や家具等について説明してくれました。そのため、内部を自由に見学することは出来ず、建物自体を美術品としてとらえているために、一切のものに触れてはいけないという緊張感がある中での見学でした。

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内部の天井や床のレベル差が外部の傾斜と調和しており、軒先までその考えが徹底されています。
そして、それぞれの部屋はそれぞれに外部と関係性を保ち、開口部の取り方も大きさや向き等がしっかりと計算されて設計されていることにも気づきます。

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家具や照明器具をはじめ、ドアノブから建具の仕掛けなどの人の手が触れる細かなところまで、すべてアアルトによってデザインされたもので、この場所そのものがアアルトであるとまで感じられました。

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なかなか行けないような牧歌的な素晴らしい環境と、その建築の自然に溶け込むように計画されたフォルムの美しさは、ずっと憧れていた建築だっただけに心に深く焼きつきました。
  

夕刻、日が暮れかかる中でカレ邸を後にしましたが、後ろ髪をひかれるような気持ちで帰ってきました。

宮野 人至  ㈲宮野人至建築設計事務所
by npo-iezukurinokai | 2013-12-21 17:51 | Comments(0)
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