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”まちに出た、建築家たち。”ーNPO法人家づくりの会

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木材の乾燥−天然乾燥は本当に良いのか?

アトリエフルカワの古川です。

木材の乾燥について書いてみたいと思います。
(キノイエセブンのFacebookページの連載より)

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勉強熱心な建主さんによく言われることがあります。

「天然乾燥の木材が良いと聞いたのでぜひ使いたいのですがどうでしょうか?」

一般的には乾燥は機械を使い石油などの化石エネルギーで木材を加熱して行います。これを「機械乾燥」といいますが、これに対して化石エネルギーを使わずに太陽の熱などで乾燥させるのが「天然乾燥」です。

家をつくる木材は、柱などの骨組み材でもフローリングなどの仕上げ材でも乾燥させて使うことが当たり前になっています。

それでは、なぜ木材は乾燥させないといけないのでしょうか?

木材は、大雑把に言って、「繊維分」「樹脂分」「水分」の三つで出来ています。この水分は、森で育っている木の中にはたくさん含まれています。この水分の量を示す言葉が「含水率」です。材木の中の固形分に対する水分の重量比なのですが、杉の含水率はとても高くて、森で育っているものの中には200%を越えるものもあります。

写真は、杉の木を伐採したところですが、切り口がしっとりと濡れていて木の中の水分の多さが実感できます。伐採見学会に参加されることがありましたらぜひとも切り口を触って欲しいと思います。

さて、この木の中の水分は伐採されるとどんどん抜けてゆきます。水分が抜けることを乾燥といいますが、自然に木は乾燥してゆくのです。

この乾燥がどんどん進み、ある段階になると木が収縮などの変形を始めます。

乾燥させていない木材を使うと、木の収縮で家がねじれてしまうこともあります。そのために、木材は乾燥させて使わないといけないのです。



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今回は30%と13%の壁についてお話しします。

木材は大きく分けて、繊維分と樹脂分と水分から出来ているという話を前回しました。
そして、実はこの水分はさらに二種類に分けられます。

ひとつは木材の細胞の中で自由に動き回る「自由水」で、もうひとつは細胞組織と分子結合している「結合水」です。

木は生き物です。根から水を吸い上げて葉っぱで光合成をしていますが、その時に使われる水分は「自由水」です。「自由水」は木の内部で自由に動き回れますので、木を切り倒した後もスムーズに木材の内部から出てゆきます。

おおよそ、木材の含水率の30%以上の部分が「自由水」です。木材が乾燥してゆく時は、まずは「自由水」が木材から出てゆきます。この「自由水」は木材の繊維分と関わりなくいるものですから抜けていっても木材が収縮したり曲がったりはしません。

木材がどんどん乾燥していって含水率が30%を切るくらいから「結合水」が抜けてゆくようになります。この「結合水」は木材の繊維分と分子結合しているために、水分が抜けてゆく過程で木材は収縮しはじめます。

冒頭でお話しした30%の壁というのはそういうことです。

さて、木材をそのまま放置しておくとどうなるでしょうか。私たちの生活環境の中にはある程度の湿気がありますので、木材の乾燥もその湿度よりも乾燥するということはなく、ある程度でストップします。この状態の含水率を「平衡含水率」といいます。「平衡含水率」は地域によっても差があるのですが、おおよそ13%前後になります。これ以上は自然に放っておいても木材は乾かないのです。これが13%の壁です。

つまり、天然乾燥ではこの「平衡含水率」よりも乾かすことが出来ないのです。それが何故問題になるかは次回お話ししましょう。

また、30%よりも乾かす以上、木材は必ず収縮すると考えてください。天然乾燥だから、収縮しないとか割れないということはないのです。

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含水率というのは水分計で測定します。写真は、私が使っているハンディタイプの水分計です。木材の表面に黒い端子をタッチしてそのポイントから深さ5cmくらいまでの含水率の平均が表示されます。
含水率はその木材の塊の全体の平均値ですから、実はポイントで測定しても本来の含水率はわかりません。ですが、水分が多いとか少ないという相対的な判断や水分の変化を知るにはこのハンディタイプでも十分使えます。

2007年になりますが、ある考えのもとに含水率を30%を目指して地域材の柱と梁を機械乾燥させた住宅を作りました。この住宅の柱の水分の変移をこのハンディタイプの水分計で上棟から仕上げ材で柱が隠れてしまう直前までに4回にわたり測定してみました。

敷地の状況から2階は太陽の影響が大きいと考え1階の柱のみを測定。1階の柱の地面から1.5mの高さの北面のポイントで水分を計測してみました。

一番最初に驚いたのは、同じ山から切りだしてきた同じサイズの柱で、同じ時間、おなじ乾燥機にいれていたはずなのに、含水率に大きな違いがあったことでした。

一番含水率が高かったもので35.4%。一番低いもので12.1%です。高い方でも30%を目指したことからすればそれほど問題はないのですが、バラつきの大きさを知りびっくりしたのでした。これは、杉の木の中に乾きやすいものとそうではないものがあるということです。

また、2回目の測定数値が一回目よりも増えた個体が多かったのも驚きでした。実はこれは不思議なことでもなんでもなく、2回目の測定の日の早朝まで雨が降っていたからなんです。つまり、木材は周囲の環境の変化により含水率が減ったり増えたりするということなんです。

ただし、それらのバラつきのあった含水率も4回目の測定ではおしなべて含水率は下がりバラつきも減っていました。上棟から仕上げ材が張られるまでの間にも自然に水分が抜けていっていることを確認できたわけです。

実は、含水率を30%を目指したある目的とは、上棟から仕上げ材が張られるまでの間に自然に水分を抜こうということだったのです。

機械乾燥に対して違和感を覚えるのは、石油などの化石燃料をたくさん使うということです。化石燃料は使わなくて済むのであれば使わないほうがいいですよね。だったら、天然乾燥がいいではないかと言う方もいると思いますが、実は天然乾燥はとても時間がかかります。薄い板のようなものでしたらそれほどでもないのですが、柱や梁などの太いものは、かなり時間がかかります。前回お話しした平衡含水率まで水分が抜けるまでには、何ヶ月もかかります。あるいは水分が抜けにくい個体であれば何年もかかることがあるといいます。

家を建てようと思ってから木が乾くのを、何年も何ヶ月もじっと待っている、そんなことが出来るかというと、それはやはり難しいでしょう。それだったら、機械乾燥もある程度使った、機械と天然のハイブリッド乾燥がうまく出来ると良いのではないかと考えたのでした。それが、30%を目指した乾燥の試みです。

この試みにはもうひとつの意図があるのですが、それについては次回お話いたしましょう。

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杉材の人工乾燥についてちょっと掘り下げてみます。

杉の乾燥が難しいのは、乾燥の過程で変形や割れが生じて、乾燥したはいいのですが使えない物になってしまうリスクが非常に高いことです。

天然乾燥にしても機械乾燥にしても杉材は変形や割れを起こします。これは杉材が生物であり、内部の細胞組織など一様ではなく繊維方向などに癖があることが原因です。しかし、中には変形や割れの少ない「素性が良い」良質な材料もありますが、多くの材の素性はそれほど良くはなく癖があると考えたほうがいいでしょう。

杉材の乾燥については多くの方が色々な試みをされていて、最近では、割れや変形がほとんど起こらない「ドライングセット」という高温による処理を行う乾燥方法が多く採用されるようになりました。
くわしいことは避けますが、今までの乾燥では使ってこなかった高い温度、100°以上の熱を杉材に与えることで、杉材の内部の素性を整えてあげるわけですが、木材にストレートパーマをかけて癖を取るのだとイメージしてもらうといいかもしれません。

この方法ですと、たしかに割れが少ない仕上がりになります。

しかし、2点ほど問題が指摘されています。

ひとつは、仕上がりの色味が褐色になり、杉本来の淡いピンクというような美しさがなくなること。

もうひとつは、表面の割れは少なくなるのですが断面を見ると内部に割れが生じていること。写真は内部割れを生じた杉材です。

色については構造材で使うと割り切れば問題はないでしょう。褐色の杉の色も悪くはないと個人的には考えます。ただ、褐色になっているのは材木の樹脂成分が高温で変成してしまったためのようで、杉材が本来持っている粘り強さも失っていると多くの大工さんは語っています。

内部割れについては、材料の強度試験をすると影響がないという結果が出ているようですが、材によってはかなり大きく割れているものもあり本当に大丈夫かと心配になることもあります。

ドライングセットで杉が本来持っている魅力がなくなるのであれば、手放しで喜んでもいられないのだと思います。

前回、私たちの試みとして含水率30%までを機械乾燥に頼って、そこからは自然に乾かすというのは、実はドライングセットに対する違和感、つまりは材が高温で変成してしまっている事に対する違和感、内部割れが生じしてしまうことへの違和感なんですが、それに対するひとつの試みなののです。

もちろん、我々がやっていることは小さい試みなので、研究者による成果を待ちたいと思います。杉材の乾燥方法については未だに決定打がないのですから。

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本題である「天然乾燥は本当にいいのか?」に戻りましょう。

その前に、いまどきの住宅について、ちょっと考えてみます。

住宅の性能として気密性の高さと断熱性の高さが求められています。いわゆる「高気密高断熱住宅」です。国も「高気密高断熱住宅」を推進しています。気密性能と断熱性能が上がれば夏場のクーラーにしても冬場の暖房にしてもエネルギーのロスが少なくなり省エネルギーの家になるからです。

311以降、エネルギー問題が深刻な課題となり我々の前に突きつけられましたが、そういう点からも「高気密高断熱住宅」の推進は間違ったものではないと私も思います。

いまどきの家は「高気密高断熱住宅」ではなくとも、それなりに気密性と断熱性がすぐれています。それに比べて、ちょっと前の家、そうですね、およそ30年から40年前くらいまでは、窓も木製でガラスもシングルガラスだったりで、すきま風がピューピュー室内に入っていました。
私が新潟で生まれ育った家もそんな昔の家でした。今では笑い話でしかありませんが、雪降る冬の朝、布団から起きてみると足元に雪が積もっていたなんてこともありました。冬は室内も外と環境がほとんど変わらないところに住んでいたんですね。
逆に夏は涼しかったですし、クーラーなんてものはほとんどの家にはありませんでした。

そうした昔の家で暖房はどうしていたのかというと、もっぱら炬燵でした。炬燵に潜り込み、上には綿入れ(どてら)を羽織って過ごしました。

このような身体の一部だけを温める暖房を「局所暖房」と言います。それに対して、室内全体を温める方法を「全室暖房」といいます。

よのなかの家の暖房の方法がどんどん「局所暖房」から「全室暖房」に移り変わってゆきました。すきま風のはいる家なんて前時代の遺物として葬り去られてきたのです。

そして、実はこの「全室暖房」というものが、木材にとってとても過酷な環境を作り出すのです。

以前に、13%の壁と称して「平衡含水率」のお話をしました。「平衡含水率」とは自然において乾燥させたときに最終的に落ち着く含水率のことです。実は「局所暖房」では、家の中の材木は ほぼこの「平衡含水率」で落ち着きます。それはそうですよね、室内とはいえ外にいるのとほとんど変わらない環境なんですから。

一方、「全室暖房」で特にエアコンで暖房をする場合には、室内は過乾燥となり、木材の含水率は「平衡含水率」をはるかに下回り7%くらい、ヘタをするとそれを下回ることもあるのです。
「全室暖房」では、室内環境が過乾燥になる、乾燥し過ぎになる、それが木材に大きな負荷となるのです。

一般的に木材の乾燥は含水率が15%くらいになるまで行いそれ以上は乾燥させません。それは、「平衡含水率」まで乾燥させておけば大丈夫という判断なんですが、「全室暖房」の家ではさらに木材の乾燥は進み、収縮や割れが発生する可能性が出てくるのです。

天然乾燥の木材は十分に乾燥させたとしても含水率は20%程度が限度だといいます。それに比べて人工乾燥では15%を目指して乾燥させます。うまくゆくともう少し乾燥できるかもしれません。しかし、住まい方として「全室暖房」にするのであれば、どちらも木材の乾燥の程度は甘いということになります。特に天然乾燥で乾燥させた木材にとって「全室暖房」の環境はかなり過酷な環境に違いないことは想像に固くありません。

天然乾燥は確かに化石エネルギーを使わない地球に優しい乾燥です。私もできることならば天然乾燥で木材を乾燥させたほうがいいと考えています。しかし、住宅を設計する立場として、住まい手にストレスを与えない快適な暮らしを考えると、もちろん住まい手によっても違うのですが、多くの方に、今更すきま風が入る家をおすすめするわけにはいかないのです。「全室暖房」を前提として気密性に優れた断熱性能の高い家を設計して提供したいと考えたときに、木材の乾燥はたいへん大きな問題となるのです。

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最後に木材の品質について考えてみます。

木材の品質表示にはJAS(日本農林規格)が使われます。建設・建築という大きなくくりを工業とすればJASではなくJIS(日本工業規格)ではないのか、ということになりますが、これまで書いてきましたように、木材は生物資源で個体差が大きいのでJISでは扱えないわけです。

そこで、JASなのですが、大きく目視等級区分という外観から判断する方法と機械等級区分という測定機械を使った区分があります。
区分としては、見た目の良し悪しと材料の強さ、そして含水率の表示となります。
見た目としては「無節」「上小節」「小節」という三等級での区分となりますが、これは節がどのくらいあるのかという区分であり、木目の美しさなどは評価されません。変な話ですが美しい節というのも評価されません。
強さはヤング係数というものを測定機械で測ります。含水率も測定機械で測ります。

JAS規格の製品を作れるのは認定を受けた工場のみです。

それで、どのくらいの割合でJAS規格の木材が市場に流通しているかといいますと、実は1割に満たないといいます。
木材を使う側からすれば、そうした品質を評価する規格があるのであれば、規格に適合した物を使いたいと考えるのは当然ですが、実際はそうなってはいません。
理由としては、JAS認定を継続的に受けるためのコストがかなりかかるためです。認定を受けた工場でも維持ができずに取り下げを行う場合も多いようです。
単純に、JAS規格材がそれに見合う価格で市場で取引されるのであればそんなことはないのですが、現状は厳しいわけです。

そんな中でも、キノイエセブンの母体となった「木の研究会」のメンバーの中には、木材の品質に対して真摯に取り組んでる人たちがいます。

秩父の金子製材さん、福島の協和木材さんもJAS認定工場です。

コストがかかるから品質についてどうでもいいということはありません。自分たちが提供してゆく木材についてちゃんと品質表示をしてゆくことはとても大事なことです。
我々設計者も、そして、木の家に住みたいと考えてくださる方々にも木材の品質について、今一度、考えていただけると良いかなと考えます。

天然乾燥は本当にいいのか?という本題に戻りますが、「天然乾燥」をブランドにしているところが多いような気がします。木材も商品ですからブランディングは大切だと思いますが、しっかりとした品質表示をともなったブランディングをしてしてゆくことが大切だと思います。
by npo-iezukurinokai | 2014-07-14 19:48 | 古川 泰司 | Comments(0)
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