昨日に続きピレシュのピアノを取り上げます。
今年になって、ショパンの演奏にも定評のあるピレシュの2枚組みCDが出ました。
ここで取り上げられている曲は、ショパンの晩年のものばかりで後期のピアノ曲に絞られています。
39才の若さで亡くなったショパンは、35才の時、敬愛していた父を失い、体調を一層悪化させ、甚大な精神的ショックと、その後、ジョルジュ・サンドとの別れもおとずれることになります。
このような時期、つまりピアノ・ソナタ第3番が作曲された1844年から、彼が亡くなる1849年の5年間にかかれた曲集です。
「第3ソナタは、よりしっかりと制御されているように見えるけども、実は深く混沌としている。そこには、あたかもショパンが、過去の苦闘を回想し、新たな論理への飛躍を行うために用いたかのような、絶え間なく起伏を繰り返すエネルギーがあるのです。私がこの作品を弾くときにはいつも、まずは全てをばらばらに解体することから始め、最後に全てを組立て直すというようなかんじで演奏に臨む。」とピレシュは述べています。
私にとってのショパンは、長年嫌いな訳ではなかったのですが、もうひとつ本格的に踏み込んで聴こうとしなかったのには、それなりの理由があります。
ベートーヴェンやシューベルト、ブラームスといった作曲家の、後期ピアノ曲のような深淵な深まりを聴き取れずにいたからです。
今回、ピレシュの2枚のアルバムに出会ったことで、ショパンの晩年の曲には、シューベルトに共通するものがあると感じ、今までの距離がぐっと近づいたことを実感することが出来たと思っています。ピレシュに感謝したい気持ちです。
実は明日、事務所から歩いて15分のところにある武蔵野芸術劇場で、このショパンの後期ピアノ群を・ピレシュがやって来て演奏します。
今から待ちどうしく、わくわくしています。
十文字 豊/アルコーブU(
NPO法人家づくりの会所属)