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”まちに出た、建築家たち。”ーNPO法人家づくりの会

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2018年 02月 08日 ( 2 )

石造りのように柔軟な

紹介せずにはいられない、「石造りのように柔軟な」という変わった題名の本です。
この本は北イタリアの伝統的集落、建物の調査報告書みたいなものだけど、ちっとも堅苦しくはない。
へー、そうなのかと、新しいものの見方が散りばめられている。

それにしても、なぜこのような本が東洋の果ての日本で翻訳されたのか、読んでみてよく分った。
近代化によって人間と環境のなじみ深さが失われつつあることへの喪失感には、今や絶望感すらあるが、それはイタリアでも同じことらしい。
ヨーロッパの国々は日本に比べたら、まだましだと思っていたがが、そうでもないらしい。
ところでこのような本は、ややもすると牧歌的なノスタルジアに終わることが多い。
しかしこの本はかつての集落のありようをきわめて冷めた目で、なぜこのような形態になったかを実体の観察の中から解き明かしている。
北イタリアの美しい景観が表層的な理解では解き明かせないもので、実は日常の人間の生存と環境との深いかかわりのリアリティーの中から生み出されたものであることを理解させてくれる。
それは、美しさと生活のリアリティーとの関係、この問いへの解明を一歩進めさせてくれるかもしれない。


d0021969_15375753.jpg石造りのように柔軟な: 北イタリア山村地帯の建築技術と生活の戦略
  • Andrea Bocco,Gianfranco Cavagli`a,多木 陽介
  • 鹿島出版会
  • 価格¥ 3,132(2018/02/08 12:28時点)
  • 発売日2015/04/01



この本を読みながら、じゃー、現代の僕たちは建築や街づくりをどう考えたらいいのだろう、と思った時に、やはり帰り着いたのがこの本。
この本も生活のリアリティーに根差している。
名著中の名著ですね。

d0021969_15384390.jpgパタン・ランゲージ―環境設計の手引
  • 平田 翰那
  • 鹿島出版会
  • 価格¥ 10,584(2018/02/08 12:28時点)
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またもう一つ、日本の美しい茅葺屋根が人や地域とのかかわりのリアリティー中から生まれたものであることを解き明かした名作がある。

d0021969_15384912.jpg新版 茅葺きの民俗学―生活技術としての民家―
  • はる書房
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  • 発売日2017/07/20





興味のある方は、http://www.izumi-arch.com/blog/9083/から…
泉 幸甫/泉幸甫建築研究所

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by npo-iezukurinokai | 2018-02-08 15:47 | 泉 幸甫 | Comments(0)

日本一の大仏に願掛け Ⅲ 佳水園

京都は「都ホテル」に泊まる。
都ホテルというのは昔の呼び名で、今は「ウェスティン都ホテル京都」という名前に変わっている。
都ホテルの離れに数奇屋の「佳水園」(かすいえん)がある。
設計は村野藤吾、1959年竣工。
築50年以上になるが、チッとも古くならない。
もともと村野藤吾は戦前よりこの都ホテルの設計にかかわっていて、佳水園だけでなく、ホテルのいたるところに村野ワールドがある。

しかし何といっても佳水園は村野の代表作の一つでもあるから、特別なもの。


村野さん68歳の時の作。
村野さんは93歳まで仕事をし続けた人だけど、一般の世界から言えば68歳になると仕事から引退した人がほとんど。
村野さんにとって68歳は青二才だったのかもしれない。
エネルギーに満ち溢れた仕事だ。
勿論、才能もあるのだろうが、気力、イメージが漲り、それが設計に乗り移らないとできない建物だ。
設計をする者から見ると、村野がこの建物の設計にどれだけ渾身の力を注いだかが見えてくる。

実はこの建物を見るのは3度目。
以前は見えなかったが、今回始めて見えてきたものがあった。
村野の作り方というか、やり口というか、そういうものがいくつか分析的に掴めた。
あー成る程、こうやると村野の世界は作れるのかと。
で、それは何かと言うと、申し訳ないがヒ・ミ・ツ。
ただ少しだけ開示すると、一つに隅や端の扱い方に神経が行き届いている。
写真から探してみてください。

村野はこの佳水園の設計の頃から、今やっている仕事を人生最後の仕事と思いながらやり続けたらしい。
そのような覚悟が93歳まで続いたのだろう。
やはり、凄い。


泉 幸甫/泉幸甫建築研究所


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by npo-iezukurinokai | 2018-02-08 15:13 | 泉 幸甫 | Comments(0)